☆2022年1月8日(sat)
「Everybody needs Rock’N’Roll Vol.5」
芸人さん、英語の講師、YouTuberなど多彩な活動を繰り広げているニックさんをフロントマンとするバンド「The Do-overs」のライブが1月初旬に行われました。
今回はその時の模様とライブ終了後に伺ったニックさんのお話を交えたレポートをお届けします。
レポート
オープンとともに会場では本田さんのDJタイムが始まる。いつもなら静かにバンドのスタートを待つことが多いのだが、この日は会場に足を踏み入れた途端にご機嫌な音楽に心も身体も踊らされてしまう。
しばし楽しい時間を過ごし、本田さんが十分に温めたステージにスモークがたかれる。次第にフェイドアウトする音楽と入れ替わって「The Do-overs」のメンバーがステージに登場する。
ニックさんは深い紺色のGパンにGジャンというシンプルなスタイルを、なんとも美しく着こなす。きれいな栗色の髪の毛に、端整な顔立ち。フロアにいる時も自ずと目立っているのだが、ステージに立つとさらに惹きつける力を放つ。
音楽が鳴り響くその前に簡単な挨拶をする。穏やかで明るい話しぶりもその魅力の1つなのだろう。
今回のライブは、バンド名を改めて心機一転臨んだ。しかし、そんな気負いを感じさせないリラックスした雰囲気で始まった。
本人曰く、アメリカ人の勢いのおかげだと。確かに、どこかグイグイと引き込まれていく、そんな勢いがそこにはあった。ただ、勢いだけではなく、当然のことながらメロディーとしっかり重なり合った上質の英語詩と素敵な声のボーカルは聴いている人をあっという間に酔いしれさせ、ここが日本であることをうっかり忘れさせてしまう。
何曲か演奏した後に、MCが入る。お笑い芸人もしているニックさんは惜しげもなく自分のギャグを披露していく。フロアは束の間、ほっこりとした雰囲気に包まれるが、曲の始まりとともにまた異国の地へと連れていかれる。
愉快な芸人さんはドラムのカウントとともに一瞬でロックンローラーに変身した。
話を聞いてみると、彼らは結成して2年。今回のバンド名の変更の理由を尋ねてみると、以前の名前は長くて覚えにくく、しかもアメリカではよくありそうなバンド名だったため、早めに変えることを決めたとのこと。
新しい名前である「The Do-overs」は、外国の友人たちにも相談をし、覚えやすく、響きもいいものを選んだ。
ちなみにDo-oversの意味は「やり直し」。バンドとしても、ニックさん自身としても再出発の意味も込められているようだ。
多彩な活動をしているニックさんにとってのバンド活動はどんな存在なのだろうか。
様々な活動の中でも、音楽活動は安心して自分をさらけ出すことができて、すぐに人とも仲良くなれると感じているとのこと。英語の講師を始めて2年、芸人としては12年のキャリアをもつニックさん。音楽に関しては、なんと8歳の時から曲作りを始めていたという。
そもそも、音楽がニックさんのルーツなのだ。
環境にも恵まれていた。アメリカでプロミュージシャンをしている叔父に、その当時から色々なことを教えてもらっていたという。演奏のテクニックよりも自分で曲を作ることが大好きだった。なので、自分の作った曲を自分のバンドで演奏し、披露するということは今のニックさんにとってもこの上なく楽しく、大好きなことなのだという。
バンドの曲は、アメリカにいる従弟との共作もあるが基本的にはすべてニックさんが作っている。メロディーは得意だが、歌詞が一番難しいと話す。
ライブの中では、途中から日本語の歌詞になっている曲があり、印象に残った。
もともと英語の歌詞だったものを日本語に訳して作ったもので、今回のライブでは、1番は英語で、2番は日本語で歌ったのだという。
現在制作中のアルバムでは日本語バージョンと英語バージョンの両方を収録予定とのこと。聴き比べてみるのも面白そうだ。
彼らの曲を聴いていると、どことなく懐かしさを感じるような気がした。古き良きロックンロールの雰囲気がどことなく匂ってくるようだ。
そもそもニックさんは古いものが大好きだという。洋服も音楽も日本のアニメも。普段聴いている音楽は、ビートルズ、ラモーンズ、ストレイ・キャッツ、エルヴィス・プレスリー、エルヴィス・コステロなどだそうだ。日本ではブルーハーツ、ウルフルズが好きだという。
制作中のアルバムも、歌詞はパンクだが、曲は初期のビートルズを意識しているとのこと。
このアルバムは、6か月くらいの時間をかけて、じっくり、楽しみながら作っているようだ。
2年程前に作ったアルバムはパンク色の強いものだったが、今回は色合いが違うという。
苦労したのは、コーラスアレンジ。
自分一人のアレンジではなく、THE CATTLEFISH FRITTERの凄井テツオさんのアレンジや、アメリカの叔父が作ったアレンジも入っているとのこと。
テツオさんとは、以前対バンをした時に知り合い、それが縁となって今回のアルバムの制作にも携わってもらっているそうで、そのレコーディング技術の高さや耳の良さに驚いたという。叔父の作ったアレンジはそんなテツオさんも絶賛するほどの素晴らしいものになっているとのこと。
こちらも、ライブとは一味違った音を楽しめそうだ。
アルバムリリースとともに、今後の活動についても伺った。MV制作、月1程度のライブはやっていきたいとのこと。そして、自分のやっていることを全て活かした発信の仕方をしたいと。そんな意気込みを語る中で、ニックさんはこうも語った。
「自分は上手くなるのが全部遅い。20代は勢いだけでやってきたが、やっと様々な知識もついてきたし、経験も活かせる36歳の今が1番いいと思っている。」
この言葉を聴いて、とても不思議な感じがした。こちらが感じていたニックさんへの印象ががらりと変わる一言でもあった。
「遅い」ということは、往々にして負のイメージを受けることが多い。しかしニックさんが「遅い」と語った言葉からは全く負のイメージを感じなかった。そういう自分自身の認識をもちながらも、「遅くても上手くなる」という前向きな考えで、様々なチャレンジを続け、今の才能を発揮しているからなのだろうか。
彼を輝かせているのはその多彩な才能だけではなく、この前向きさとひたむきさなのかもしれないと感じさせられた。
そんなニックさんが信じていることがあるという。それは古いものには味がでるということ。
ライブハウス、楽器や機材、バンドでも。歴史が長いバンドが自分の曲をやるとそういうものがでると感じていると。
「The Do-overs」がスタートして2年、リスタートを切ったバンドの目指すところは、年月を重ねて出せるようになる味わい深さなのだろう。
今を輝き、未来をも輝こうとするニックさんの大きな夢は始まったばかりだ。
リリース情報
★"The Do-overs"1stフルアルバム『What You Want?』
ドカドカレコーズより10/2(日)発売決定!!!
★リリースパーティー
10月2日日曜日 @新宿Live Freak
"DOKADOKA RECORDS presents"
『The Do-overs 1st full album "What You Want?" Release Party!!』
【Bands】
The Do-overs
THE CATTLEFISH FRITTER
KINGZABOOON
【DJ】
本田隆
open 18:00 start 18:00
adv ¥2500 door ¥2800
ライブハウス情報
JR新宿駅から徒歩10分ほど。新宿2丁目の交差点からすぐのアコード新宿ビルB1F。
ビルの階段を降りると、明るく開放的な空間が広がっている。昔ながらのジャズクラブ「新宿ピットイン」とフロアを分け合っていることもあり、明るい中にもにじみ出てくる雰囲気に重みがある。
通路で受付をし、扉を開ければ古き良きライブハウスの空間が広がる。