Vol.16は、Vol.15に引き続き「ザ・クレーター」のインタビュー後編です。
後編では、メンバーの皆さんの好きな音楽やエマージェンザの準決勝(5月14日(土)@渋谷Eggman)に向けての思いなどを語って頂きました。
最後までお楽しみください。
インタビュー記事~後編~
右からVo.&Gt.キクナガシンスケさん/Dr.シモセユウゾウさん
Gt.イトウカズマさん/Ba.オクダユウキさん
~好きな音楽について~
ー皆さんは普段どんな音楽を聴かれているのですか。
カズマ)
シモさんはメタリカなんですよね。
シモセ)
あー、好きなのはそうなんだけど。でも、最近聴いて耳馴染みのいい曲かっていうとちょっと違って。最近は、オリンピックの開会式の時に流れたゲーム音楽のクラシックな感じはすごくいいと思って好きなんだよね。ずっと聴いてたいなって思います。
オクダ)
僕は意外と思われそうですが、日本語ラップをよく聴いてます。地元のラッパーを聴いてみたりとか。僕はどっちかっていうとトラックのが好きなんですけどね。
シモセ)
もともとはゴリゴリロックンロールな感じのルーツなので、どっちかっていうと縦ノリ、8ビートな感じなんだけど、全然違う所に行っちゃったね(笑)。
オクダ)
音楽始めた初期衝動という意味ではロックンロールやパンクなんですけど、R&Bとかソウルとかも若い頃から聴いてて、元々ヒップホップの人たちはそういった既存曲のリフなんかを使ってトラックを作るんですけど、そのサンプリングとかが面白いんですよ。もちろん歌詞も面白いんですけどね。
気づいたら横ノリな傾向になってましたね。
シモセ)
僕はビースティ・ボーイズとかのヒップホップは好きなので、そこの横ノリっていうのはシンクロすると良くなっていくかもしれないね。どっちかっていうと、僕はロックンロールのドラムっていうのは苦手で、速いリズムが叩けなかったりして。オクダくんとカズマは、ミッシェルガンエレファントがすごい好きなんだけど、あんな速いドラム叩けないんだよね。だからこっちに来てくれるとすごいやりやすいかもしれないね。
オクダ)
わかんないよね。カズマと俺でまたそっちに行っちゃうかもしれないしね(笑)。
シモセ)
その時はもう、打ち込みでやるんだな(笑)。
カズマ)
僕は最近はオールドのハードロックしか聴いてないですね。レインボー、ディープ・パープル、ビートルズ、ブラック・サバス、クイーン、でゴスペラーズが急に入ってますね。ゴスペラーズ結構好きで。もともとギターを始めたきっかけが中学の友だちとゆずをやろうって言って、アコギを始めたんですよ。で、高2でなぜか沼って、ハードロックを発明したブラック・サバスにハマって、で大学の時にメタルにハマって、で今ここに落ち着いてるんですけど。
シモセ)
ブラック・サバスは俺、めっちゃルーツだもん。
カズマ)
いやあ、でもシモさんがルーツじゃない、ロニー・ジェイムス・ディオがボーカルだった頃が好きなんですよ。
シモセ)
あー、俺はオジーだから。でも、ロニー・ジェイムス・ディオも聴いたけどね。こういうの聞いてると、曲でもカズマはリフ先行の音楽が好きなんだなってわかるよね。
カズマ)
そうですね。わりと、ギターヒーローものが好きですね。
キクナガ)
僕は友人に勧められた映画の音楽とかを聴いてますね。例えば「ブルース・ブラザーズ」とか。激烈にはまって。そこに出てくる音楽も、すごい色々出てくるんですけど、そういうのを聴いたりですとか。あとは「ベルーシ」っていう、「ブルース・ブラザーズ」のジェイク役をしていた人のドキュメンタリー映画が横浜でやっていたんですけど、そういうのを観に行ったりとかですかね。
~それぞれの思い~
ー新体制で活動を再開した今、お一人お一人がどんなことを感じていますか。
キクナガ)
僕が感じるのは、人生は困難の連続じゃないですか。僕らにとっては20年バンドを続けることだったり、社会全体では今のコロナ禍だったり。思い通りに行かない時に、そのマイナスをどうプラスに変えていけるのかが人生の楽しいところだと思うので。バンドとしても、直近ではメンバーの脱退ということがあったんですけど、カズマという新しい出会いもあって、今また前に進んでいる。まあ自分はマイナスがすごく多いんですけど、そこをプラスに変えてこそ楽しい人生だと思うから、これからも困難はあると思うんですけど、そこに逃げないで向かい合って越えていきたいと思っています。そこにバンドの醍醐味があるのかなと思うから、簡単なことじゃないんだけど楽しんでいきたいなと思います。
カズマ)
僕は、入る時に、もう20年続いているバンドってかなりご長寿じゃないですか。だから、決まったことを決まったようにやって毎日が過ぎていくご長寿バンドなのかなってイメージで入ったんです。でも、入って数か月経つうちに、ほんとに20年もやってるのか、このバンドっていうくらいエネルギッシュなことにびっくりしています。こんなに動いているバンド、始まって1,2年のバンドでもそんなにないぞっていうくらいエネルギッシュなんで、そこがすごいなって感じています。それまでの19年間はわからないんですけど、そのエネルギッシュさがこれから先も続くのであればすごくいいものができていくんだろうなって思っています。
シモセ)
バンドってね、大変だよね、色々と。若かろうが年寄りだろうが、違う人間が4人集まって1つのことをやろうとするわけで。カズマも言ってたアグレッシブで居続けないといけないのは安定していないからかな。色んな意味でね。だから、活動再開した今感じているのは「大変だなあ」ですね。でも今は、エマージェンザというコンテストで、できるだけ高い評価を得たいというメンバー共通の目標があって。そこに向けて、ライブという短い時間でどれだけ自分達の良いところをお客さんに魅せていくかを考えていますね。なので、今僕たちのライブを観に来てくれると得が多いと思いますよ。
オクダ)
僕はカズマが入ってくれて良かったなと思っています。ほんとに大変なんですよ、バンドって。僕はめんどくさいって思う。さっき、しごきってカズマが言ってましたけど、その調整をする中で、全然カズマが辞めちゃってもおかしくないと思うし。でも、こうやって今も残ってくれて、いいこともたくさん言ってくれるし、ほんとに良かったなと思っています。
シモセ)
なんか安心するよね。バンドが、ただのんべんだらりと続いていればいいとはあまり思っていなくて。バンドとして、集まってやっているなかでヤマっ気がなかったり、仲良しこよしでやっていてもつまんないなと思ってしまうんだよね。
やっぱいい曲作りたいし、いい表現をしたいし、いい評価を得たいという気持ちを剝き出しでスタジオの中で話し合ったり、演奏したりっていうのが続けられているのはいいのかなと。それが、オクダくんの言葉を借りれば「めんどくさい」だし、僕の言った「大変だなあ」だし、キクナガくんの言った「すごく楽しいこと」でもあると思うし、カズマが言っている「20年経っても魅力的」なとこになれているかもしれなくて、観てくれる人たちにも届いていたらいいなと思いますね。こういうトータルで僕らを楽しんでくれると嬉しいなあと思っています。
ー先ほどから、話にも出ていますが、改めて目下の目標であるエマージェンザに向けての意気込みをお願いします。
シモセ)
当然、優勝というのはあります。レッドブルでもできなかったしね。ただ、コンテストにルールがあって。例えば、当日会場に来て、挙手をしてくれたら2ポイント、配信の人は1ポイントなんです。それって、今のコロナの状況と合っているのかなというのは僕らにはわからなくて。でも、それは他のバンドも同じ状況なんでね。
で、勝ち負けの話は、一旦置いといたとしても、僕らのバンドのポテンシャルとして、カズマも入ったばかりなので、短期的な目標としてここまでにこうなろうって決めて進んでいけるから、エマージェンザがあってありがたいなと思っています。
なので、個人的にはその時の結果だけを見るのではなくて、この期間で僕らがどう変わったのか、プロセスを見て欲しいですね。今、変化の真っ最中で、その変わっていく様子を見れるというのはすごくセクシーなことだと思うので。
エマージェンザは勝つことが目標というよりも、バンドが良くなっていくための手段だと思っています。もちろん、勝ちたいですけど。
カズマ)
まあ、僕はわりと勝ちにこだわるタイプなんですけど。でも、エマージェンザという目標があるので、スタジオがかなりシビアになっているので、それはいいですよね。「今日は何やろうか~」っていう感じのスタジオはつまらないですからね。
シモセ)
それはないからね。前回のスタジオでそれぞれが持ち帰った出来高を各自が考えて、次にまた持ち寄って合わせていく。ジャムセッションで天才的なみたいなのはあまり無く、素振りしてちょっとずつ試合で打てるようになってくるみたいな、ぼくらは高校球児みたいな感じです。今はそれでいいのかなと思っています。
カズマ)
厳しいノックを受けています(笑)。
シモセ)
や、今はほんと調整期間だからさ。僕らの目標って、エマージェンザで勝つことだけじゃなくて、お金を払って観に来てくれるお客さんが常に満足してもらうことだから、その準備を高いレベルでしたいと思っている。自分らなりにね。そこに妥協はしたくないなと。そんな高校球児バンドです。20年経っても、これは変わらないね。
~20周年の今後の展開~
ー最後に、20周年イヤーの今後の展開も含めてお願いします。
シモセ)
今やっている取り組みを続けて、自分達がステージの上だったり、音源だったりで自分達なりにかっこいいと思うものを、音の表現でやっていきたいなと思っています。その中でも、エマージェンザに出場するきっかけでもあるんですけど、海外を含めたいろんな所でライブをやりたいと思っています。2年前にもタイでやったことがあって。タイに行ってわかったんだけど、言葉が通じなくても僕らの日本語のロックで会場が沸いたんだよね。そういうのをいろんな所でやって、いろんな人と仲良くなっていけたらいいなと思ってますね。イカフリ(THE CATTLEFISH FRITTER)と一緒にアメリカツアーとかも行きたいけど、でも彼らほどバイタリティーはないから、全行程一緒じゃなくてもいいかな(笑)。
カズマ)
バンドなので、聴いてもらわないとわからないんですよね。なので、まずはライブに来て欲しいですね。今までのザ・クレーターが好きって人がどうとらえるかは別個の問題として、これはこれで楽しいぞって思ってもらえたらいいかなと思っています。
キクナガ)
このインタビューの機会も頂けて本当にありがとうございました。こんな風にメンバー同士の思いとかを自分達ではなかなか聞くことができないし、特に新しく入ったカズマの考えとかを聞くことができて本当に良かったなと思っています。これからも、ハラハラさせてしまうことがあるかもしれませんが、気にして頂いて、そこも含めて楽しんでもらえたら嬉しいですね。
オクダ)
新たにスタッフも加わって、彼女のおかげでグッズの展開とかもしやすくなりました。新しい20周年記念のグッズも販売をスタートしていますので、そちらもどうぞよろしくお願いします!
ほら、一応宣伝もしないと(笑)。
シモセ)
ほんとこれからもよろしくお願いします、だね。まだ、僕らと出会ってない人は、ぜひ出会いたいですし、出会って頂いた方には長くご愛顧して頂きたいので、僕らなりに頑張っていくのでよろしくお願いしますかな。
インタビュー後記
1人1人の人が違って異なるように、バンドもその1つ1つが違っていて、同じではない。そんな当たり前のことが4人の話を聞いていると強く心に湧いてくる。
この4人が創り出している「ザ・クレーター」というバンドは、多種多様にあるバンドのなかでも異種独特の輝きを放っている。
4人の個性、曲の良さ、そしてなんといってもライブバンドとしてのライブのかっこよさなどが理由に挙げられる。
ライブでは、それぞれが個性を放つスタイルでステージに登場し、どこか3枚目の空気も醸し出すが、演奏が始まって叩き出される最初の音ですべての空気をひっくり返してしまう。ライブで演奏される曲も、女心を歌ったもの、イクメンソング、ちょっとひねくれたラブソングなど、実に多彩。
バンドとして20周年を迎えた彼ら。幾度かのメンバーチェンジをしながらも、20年のキャリアは自然とにじみ出ている。それでいて、バンド全体には良い意味での緊張感があり、熟練のバンドマン達が喧々諤々としながらさらなる高みに向かっている、そんな一面も今回のインタビューの中から伺い知ることができた。
そしてもう1つ、彼らの輝きの理由を挙げるのならば、それは「魔法」という言葉に表されると感じる。
今回のインタビュー中のシモセさんの発言の中にも「バンドマジック」という言葉がでてきたが、彼らは2018年に「THIS IS BAND MAGIC!」というタイトルのミニアルバムをリリースしている。その当時からザ・クレーターにとっての「バンドマジック」とは、という命題に向き合い続けているのだろう。彼らはどこまでも人間臭い。しかし、彼らの音楽は愛を歌っていて、その人間臭さは不思議と輝きに変じる。これまでも何度となくその「バンドマジック」で人の心を魅了する音楽を放ってきた。
そんな彼らが、新たな魔法使いを加え、どんな魔法で、どんなふうにライブに訪れた人たちを魅了していくのか。5月14日に行われるエマージェンザ準決勝のステージに立った時には、開催が延期されていたこの2年間の全てを吹き飛ばすような夢のバンドマジックを放ってくれることと信じている。